当研究会の相談受付及び研究・事件処理の対象分野は、国内先物取引被害及び、証券過当取引被害のほか、海外先物、オプション、
FX(外国為替証拠金取引)、貴金属スポット取引(CFD取引)、未公開株、私募債・社債、投資事業組合、匿名組合、
ファンド、仕組債、医療機関債、現物まがい商法、ポンジ・スキーム被害、預託商法被害、投資マルチ商法被害(ロマンス詐欺・
暗号資産等に関するものが多い)、その他金融商品(投資)被害全般ですが、その中でも、当研究会が、
特に伝統的に取り扱ってきた先物取引被害、証券取引被害について取り上げます。

先物取引被害について

いわゆる「先物取引被害」というのは、先物取引業者からの電話勧誘等により先物取引の投機性、危険性、複雑性についての十分な説明をしないまま「必ず儲かる、いま買わないと損です」などと執拗な勧誘により知識経験、経済的余裕等を持たない人に取引を開始させることが一般的です。

そして、業者は顧客にさらにその取引の拡大を要求し、計算上利益が出た場合でもその益金を証拠金に振り替えて取引を拡大する一方で、損計算になると、「莫大な損失が発生する」等と顧客の不安をあおって無意味な両建として新たな金員を拠出させやはり取引を拡大します。 その取引の過程で、業者は「無断ないし一任売買」、「両建」、「直し」、「途転」、「日計り」、「不抜け」といった、いわゆる、「特定売買」といわれる手法を駆使して顧客の預り資産を手数料に転化していき、最終的には、顧客がその預託能力を超えて拠出した資金のほとんどを損金ないし手数料として失わせることが、その取引の特徴です。

また業者においては、このような手法によって手数料相当額の顧客資産を収奪するとともに、顧客の建玉に対応する「向い玉」を建てることによって、顧客の損金相当を業者の益金として取り込むこともしばしば行われます。 そもそも商品先物取引は、極めて投機性が高いものであり、取引自体についても、投下した資金以上に大きな損失を被る可能性が大きいものです。

さらに、上記のような手法により先物取引業者が顧客からの預り資産を業者の手数料ないし益金に転化させ失わせる客殺しの手法が広く行われていることから、その危険性を十分理解していない人は本来的に参加すべき取引ではありません。 また近年、「外国為替証拠金取引」の被害が見受けられました。 外国為替証拠金取引とは、顧客が、業者に対し、一定の証拠金を預け、証拠金の10倍から100倍程度の外国為替取引を依頼するというものです。取引は、2つの通貨をペアとして行われ、2つの通貨の金利差により、差金決済をするものとされています。 取引は、業者と1対1で行っている(相対取引)場合が多く、この場合、顧客が儲かれば業者が大損をし、業者が儲かれば顧客が大損をする関係になっています。

担当者は、親身になってくれるように見えても、賭博のディーラーと客と同じ関係であり、利害は決定的に対立しているのです。この取引も先物取引被害と同様、顧客からの預り資産を業者の手数料ないし益金に転化させ失わせる客殺しの手法が行われており、取引の仕組みが極めて複雑かつリスクの高いものですから、もともと一般消費者が参加するべき取引ではありません。

その上、外国為替証拠金取引業者には、法規制の遅れから不良な商品取引外務員等が参入しており、まさに、「机と電話1つ」で営業を行っているような業者が少なからず存在しておりました。 そのため、平成17年の秋以降、改正金融先物取引法の施行による行政指導を受けて倒産・破産する取引業者が急増しました。 外国為替証拠金取引では、預けた資産を保護する機構がありませんので、業者が破産してしまった場合、配当を除いて返金を受ける可能性がほとんどないという深刻な問題も発生しています。

 

証券取引被害について

顧客が証券会社等の金融商品取引業者を通じて株、投資信託、仕組債、デリバティブ(通貨オプション、金利スワップ等)等の取引を行った場合における被害を証券取引被害といいます。

従来から証券取引被害として、最も一般的に訴訟等の紛議で争われてきた被害類型は、過当取引です。

過当取引とは、金融商品取引業者が顧客の口座に対し支配を及ぼし、手数料稼ぎなどのために、顧客の資産やニーズに見合わない多額や頻繁な取引を行わせることです。過当取引は、顧客の利益よりも業者の利益を優先する発想が根底にあり、極めて悪質な取引被害です。

パソコンやスマホを利用したネット取引が身近なものとなる中で、証券外務員による過当取引は以前と比較して減少しましたが、現在もこのような違法・不当な勧誘を受けて被害に遭う例は後を絶ちません。最近では、銀行が預金者に投資信託を勧誘する際に、過当な購入の取引を勧誘するという例も見られるようになっています。証券外務員による株式や投資信託の過当取引の例は全国証券問題研究会の判例データベースで見ることができます。